神の雫

ボルドーのグレートヴィンテージである1982年から22年が経った2004年、フランス料理店でソムリエ見習いとして働く紫野原みやびは、ワインの知識に関する間違いを指摘したことで客の機嫌を損ねてしまった。だが、その客の連れとして来ていた青年が、神業のようなデキャンタージュによってみやびの窮地を救った。彼こそは世界的なワイン評論家である神咲豊多香の息子、神咲雫であった。翌日、神咲雫は営業部から新設のワイン事業部への異動を命じられた。父親が著名なワイン評論家であることを会社に見込まれたからであったが、雫はそんな父親に反発していたため、デキャンタージュの腕とは裏腹に、実はワインに関してはまったくの素人であった。そんな時、突然の父親の訃報が届いた。豊多香の遺言を受け取った雫であったが、その内容は驚くべきものであった。遺言には、彼が選んだ12本の偉大なワイン『十二使徒』と、その頂点に立つ『神の雫』と呼ばれる幻の1本が、心象風景の表現によって記されてあった。そして、この記述が示すワインが、何年作の何というワインなのかを、1年という期限ですべて当てた者に、遺産である至高のワインコレクション全てを譲渡するというものであった。そこに死の直前に豊多香の養子として迎えられた天才ワイン評論家、遠峰一青が現れ、遺産を巡って雫と勝負することを告げられた。ワインに興味のなかった雫は遺産を放棄しようとしたが、その後のワインとの出会いを通じてワインに魅せられ、『神の雫』を見つけ出すことを決意する。 父親譲りの神懸かり的な嗅覚と感性を武器に、『神の雫』『十二使徒』の正体と、そこに込められた謎に迫ってゆく。