父の魂

作ったバットはどんなボールを打っても滅多に折れない南城丈太郎という優秀なバット職人の息子である隼人は、幼少時から丈太郎の仕事を通じて野球と関わりを持っていた。丈太郎の商売敵で後に父親のバット工場を乗っ取る東郷運動具会社の社長の息子であり、後々まで隼人とライバル関係になる東郷真樹との対決や、同級生たちとの交遊、また故人の波原や丈太郎のバット職人の仕事から知己となった川上、長嶋、王、金田といった当時のプロ野球選手たちとの交流を経て、やがて近所の同級生の少女の父親である谷口(少女の兄が丈太郎の弟子(ノロ谷)となっている)が監督を務め真樹も在籍する地元の草野球チーム『百科ジテーンズ』に入る事となった。時は流れ、中学の卒業間近になって、隼人は丈太郎にプロ野球選手を目指す事を告げたが、丈太郎は強硬に反対し、家業を継ぐ事を命じた。隼人は反発しつつも、当初は心理的なものだったが、その後悪化して心筋梗塞と診断され入院した父親に配慮し、迷った上でチームを退団する。一方、丈太郎は入院先の病院から抜け出して自宅に戻った時、隼人とその友人、そして南城家を心配する谷口たちの話し合いを玄関先で聞き、隼人が自分の作ったバットをプロ選手相手に叩き売りをしていた事を知った。それによって丈太郎は、隼人の心が野球にありバット職人には無い事を悟る。一旦病院に戻った丈太郎は、医者の制止を振り切って自宅の工場に戻り、一本のバットを作り上げると、そのバットにのみで『父の魂』と彫り、隼人に「野球をやりたければ野球をやれ、だが今日の自分の姿を忘れるな」と言い残して絶命した。このバットは『魂のバット』と呼ばれる事になる。