哀愁荒野

下町で小さな小料理屋を営む京子のもとに、傷害事件を起こし刑務所に服役していた腹違いの兄・竜之介が帰ってきた。六年前、向島の芸者・お千鶴を助けようと過って人を刺したのだ。刑期を終え、ようやく戻ってきた竜之介だったが、彼を待ち受けていたのは疫病神扱いする義理の母や弟、そして近所からの冷たい目だった。しかも、刑務所に入る原因となったお千鶴までが……。そこには刑務所と同じ、限りない哀しみと孤独に満ちた果てしない「荒野」が広がっていた。