初茸がり [つげ義春コレクション 李さん一家/海辺の叙景所収]

シトシトと雨の降り続く日の夜に、正太は黙って窓の外を見ていた。すると、遠くの空の中ほどに一角だけ大粒の雨が降っているのが見えた。それはちょうど初茸の生える赤松の辺りだった。驚く正太に、祖父がバックの明暗でそう見えるだけだと説明し、早く寝るよう諭すが、翌日の初茸がりを思い床についたもののなかなか寝付けない。大きな柱時計の「カッチカッチ」という音が静かな雨の夜の部屋に響く。不思議そうに柱時計を見つめる正太。なぜ大きな柱時計があるのか不思議に思い、祖父に問いかけるが鼻ぢょうちんを出して寝ている。翌朝、祖父が起き出したが、正太の姿が見当たらない。正太は、大きな柱時計の中に入り込んで寝息を立てながら寝入っていた。