二岐渓谷 [つげ義春コレクション 紅い花/やなぎ屋主人所収]

主人公の青年は季節外れの台風のあった晩秋に二岐温泉に旅に出、いちばん貧しそうな老夫婦が経営する2食付き600円の宿に泊まる。役場に勤めていた老夫婦が退職金を元手に始めた宿で、夏場しか客が来ずに冬には山を下りるのであった。渓流にイワナの魚影を認めた青年は釣竿を借りようと宿に戻ったが、釣り場に戻ってみると置いていったはずのバナナがなくなっている。夕食前に露天風呂に入ろうとすると先客があった。近づくとサルだった。驚いた青年は宿に戻ると爺さん相手にサル談義を始める。どうも、バナナ泥棒の犯人もサルのようである。その夜、台風が襲来した。犬があまりに吠えるので、爺さんと青年が外に出てみると、濁流の中の流木の上に逃げ遅れた1匹のサルがけたたましく鳴いていた。