ミュジコフィリア

京都芸術大学の入学式。その日にちを、主人公の漆原 朔が間違えたところから物語が始まる。美術学部で映像を専攻することになっている彼は、構内で「現代音楽研究会」なるサークルに所属する学生たちに勧誘を受け、言われるがままに、現代音楽の演奏に参加させられた。そして入学式の日。朔は研究会の学生からノコギリを無理矢理渡され、「新入生歓迎コンサート」にて、青田 完一作曲《DIYのための協奏曲 op. 3》をひくことになる。彼はこうして、研究会に入ることになった。もともと、朔にとって音楽は無縁の存在というわけではなかった。彼の父は高名な作曲家である、貴志野 龍(きしの りゅう)。その長男で、朔の異母兄にあたる貴志野 大成(きしの たいせい)は、京都芸大の「作曲科のエース」である[4]。かつて、朔も音楽に親しい時期があったのだが、父から「才能がない」という言葉を受けて、音楽から締め出されていた。朔は、父や、彼から才能を認められ、その教えに殉じる兄と反目している。奇しくも大成は、朔と同じ大学に所属し、研究会では部長を務めていた。朔が思いを寄せている幼馴染の小夜(さよ)は、今では大成の恋人となっている。彼女もまた、サークルのメンバーであった。